コロナ禍を共に乗り切り歩んでまいりましょう

 終わりの見えないコロナ禍。感染を恐れ昨年春から多くのお年寄りが家族や周囲の意向により高齢者施設、特に通所型のデイサービスなどへの利用を控えるようになりました。いわゆる『利用控え』です。 その結果、引き籠ることによる体力の低下、認知症の進行などの弊害が社会問題化したのは既知の通りであります。それまでデイサービスなどの施設へ通うという一定のリズムがあったからこそ健康を維持できていた高齢者は、そのリズムを一度崩してしまうと瞬く間にその影響が出てしまうのです。運動不足に陥り、筋力の低下、転倒、骨折等の懸念も強まるのです。
 まずは起床時間が乱れがちとなり、昼夜逆転現象などが起こります。昼間テレビをつけっぱなしにしながらゴロゴロしているようなことが多くなり、逆に夜が寝られなくなるのです。服を着替えることすら面倒くさいと思うようになり、パジャマなど寝間着を着たまま終日過ごす、なんてことが当たり前になってくるのです。 また、他者と会話を交わしたりすること、交流を持つことこそが大きな刺激となるのですが、それを遮断してしまうことによってあっという間に認知が進むようになるのです。
 まさしくコロナ禍が多くの高齢者にもたらせたのは、選択の余地のない社会からの閉じ込めにほかなりません。コロナへの罹患を恐れるあまり自宅へ閉じこもり、あるいは閉じ込められ、陽が消えていくようにすべてが低下していくのです。極論するならば高齢者は世間から見放されてしまった、と言っても過言ではありません。

 私はそういった状況をつぶさに見聞きした中で、『世間では暗いニュースが先行し、人々の表情はしかめっ面ばかり。せめて一日、笑顔いっぱいで楽しく過ごしてもらいたい』、『利用控えをしている高齢者が安心して通える環境を作りたい』、『オペラ歌手という経歴を生かし音楽で心に陽を当てたい』という思いから、昨年11月練馬区の武蔵関に デイサービス 葉生(ハーヴ)武蔵関 をオープンしたのでした。
 一般的に巷で漏れ聞くデイサービスのイメージというと、いわゆる「時間のお預かり」、「おもり」、「お年寄りが仕方なく通っている」、「テレビをつけっぱなし」、「ほぼ終日放置している」、「レクリエーションがつまらない、稚拙」etc… と、あまり良い声が聞こえてきません。
 私も実際そのような施設をいくつも見てきました。それではいけない! 私たちは、一定の時間のお預かりではなく、高齢者の方に生き生きとした時間を過ごしていただきたい、これからのデイサービスは人生の円熟期を迎えたシニアの方の生きる活力であるべきである、と考えます。
 鬱病を発症している高齢者が如何に多いことか・・・。利用控えが症状のさらなる悪化を呼び寄せ被害妄想なども増長させます。
 私たちは、そのような心に傷を負っている高齢者に笑顔で寄り添っております。 時間をつぶすのではなく、如何に有意義な時間を作るか、時間を楽しむか。早く帰りたいではなく、もっと居たい、明日も来たい、と思われるような施設であり続けたい、と考えております。 特別なレクリエーションを行っているわけではありませんが、私たちが最も重視するのは、テーマ、内容より、会話、言葉のキャッチボールです。なるべくたくさんの会話をし(刺激を与え)、利用者の方と目を合わせ、表情を見ながらコミュニケーションを取ることを心掛けております。
 例えば何らかのレクリエーションをやったとします。工作でもアクティブなものでも構いません。スタッフのアプローチにより利用者も行うでしょう。そして、利用者はやり方を教わりその内容を覚えます。でもそれはただ教わったから覚えるのです。 私たちはそこに必ず『楽しさ』という要素を加えます。利用者は教わったから覚えるのではなく、楽しいから覚えるのです。さらにもっと覚えようと身体が反応するのです。それが大きな意味では活力にもつながると考えます。

 現在利用していただいている方にはそれらが顕著に表れ効果が確実に上がっているのです。『笑い』。笑いは最高のビタミンです。元気の源です。『ワッハッハー』と心の底から、はたまたお腹の筋肉を使って笑い、その笑顔の伝播でコロナ禍を乗り切ろうと思うのです。 葉生(ハーヴ)武蔵関では『ハーヴのワッハッハ体操』という、おまけに声も良くなり元気が出る体操を大爆笑しながら行っております。 ちなみに音楽系アクティビティについては、本格的な演奏、歌声喫茶(合唱)を、看護師指導のもとしっかりとした感染症対策をしながらほぼ毎日行っております。
 あらためて思うのですが、『うた』が言葉に表せないほどの大きなパワーを持ち、如何に高齢者の琴線に触れ感動を生むか・・・。生きる希望になっている方も多く、時には認知症の症状の進行さえも遅らせているのではないか、というような事例を多々見るにつけ、この最高のアイテムを大きく活かしながら『感動に至る介護』を作り上げてまいりたいと思っております。

 私たちデイサービス 葉生(ハーヴ)武蔵関、とても小さい施設ではありますが、コロナ禍の中『高齢者に希望の光を灯すべく』頑張っております。葉生(ハーヴ)という名前は、葉が生まれ続けるように、この施設が 希望が生まれる場所であり続けたい、という願いをこめて付けました。
 私たちは願います。世の中がどのような状況に陥ろうが大きな笑いで吹き飛ばし、高齢者も周囲の人々も現在の状況をあきらめないで欲しいと。『決してあきらめない楽しさ』をこれからも投げかけて続けてまいります。

タイトルとURLをコピーしました